さよならイオンシネマ海老名│日本初シネコンが残した33年の功績・地域愛・スター・ウォーズ伝説と閉館全記録

「日本初のシネコン」イオンシネマ海老名、5月17日で閉館――33年間のありがとう

1993年4月、海老名駅前に誕生した<ワーナー・マイカル・シネマズ海老名>は「シネマコンプレックス」という言葉すら一般的でなかった時代に、複数スクリーンを備えた全く新しい映画館のかたちを提示しました。現在はイオングループ傘下の<イオンシネマ海老名>として親しまれてきましたが、施設リニューアルに伴い2026年5月17日(日)をもって閉館。公式サイトでの発表と同時に、長年足を運んできた映画ファンからは惜別の声が相次いでいます。イオンシネマ公式閉館告知 によれば「33年間のご愛顧に深く感謝」とのコメントが添えられ、最終日には特別上映とメモリアルグッズ配布が予定されています。

誕生の背景と“日本初”のインパクト

開業当時の国内映画興行は単館ロードショーが主流で、郊外型ショッピングセンター併設の複合映画館はまさに革命的存在でした。最大7スクリーン・1,700席を備え、国内初のTHX認定シアターも導入。立体音響と大スクリーンを複数作品で同時に楽しめる利便性は、のちの大型シネコンブームの先駆けとなり「映画館は“選ぶ”時代へ」という新しい観客体験を生み出しました。ORICON NEWS は「スター・ウォーズ公開時には連日未明から行列ができた」と当時の熱狂ぶりを振り返っています。

スター・ウォーズとの深い絆と“聖地”化

同館を語る上で欠かせないのが『スター・ウォーズ』シリーズとの関係です。1997年の特別篇公開を皮切りに、エピソード1以降の全作を最速上映。ロビーにはライトセーバー展示やキャラクター等身大フィギュアが並び、ファン同士のコスプレ撮影会も恒例行事に。スクリーン7のTHXサウンドと相まって、全国のファンが“銀河系レベルの音響”を求め海老名へ巡礼する姿は地元紙にも度々取り上げられました。タウンニュース は閉館特集で「まさに“スター・ウォーズの聖地”」と称し、写真展を併設するラストイベントを詳報しています。

  • スクリーン7…国内初THX認定/610席
  • 年間動員ピーク…約120万人(1999年『EP1』公開年)
  • ファン交流会…延べ1,500回超

閉館当日のレポート――最後の“May the Movie be with you!”

5月17日朝8時、正面入口ではスタッフが33年分の思い出写真をデジタルサイネージで上映。ロビー奥には歴代ポスターを年代順に並べた年表パネルが設けられ、来館者はスマートフォンで撮影しながら足取りを止めて見入っていました。最終上映作品はファン投票1位の『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』。エンドロール後、客席が明るくなると同時にスクリーンに「May the Movie be with you!」の白文字が浮かび、場内はスタンディングオベーション。支配人が壇上に立ち「またいつか、この街に映画の灯を」と挨拶すると、観客から自然と拍手が湧き上がりました。

  1. 来場者数:最終日だけで7,532人
  2. 配布グッズ:オリジナルフィルムしおり&ポストカードセット
  3. メモリアルチケット:事前抽選1万枚完売

地域・業界への波紋――残るものと失われるもの

シネコンの閉館は単なる商業施設の終幕にとどまらず、街の文化インフラ喪失も意味します。海老名市は人口約14万人のベッドタウンで、同館は若年層の“夜の居場所”として機能してきました。

  • 商業面では周辺飲食店の来客数が平均20%減少(市商工会聞き取り)
  • フィルムフェスティバルや学生映画祭の開催場所不足が顕在化
  • 映画館従業員89名の再配置をイオンシネマ本部が支援

一方、近隣には<イオンシネマ座間>や<109シネマズ湘南>が存在し、市は「交通アクセス改善で代替施設との連携を図る」としています。映画産業アナリストは「黎明期を支えた象徴的劇場の閉館は、シネコン経営の新陳代謝を示す」と語り、音響・座席・体験価値の再定義が求められると指摘しました。

跡地活用とイオンの再開発ビジョン

母店であるイオン海老名店は老朽化対策と次世代型モール構想のため一時休業に入り、2027年度中に「地域共創型ライフスタイルモール」へ転換予定。イオンモール株式会社は「映画文化の灯を絶やさない形でのテナント誘致を検討中」とコメントし、ライブビューイング施設やeスポーツアリーナなど“集うエンタメ拠点”の可能性を示唆しています。市議会でも「市民参加のシネマパーク構想」が議題に上り、クラウドファンディングを活用した小規模アートシアター併設案が浮上。閉館は終わりでなく、映画文化を次世代へ手渡す契機として注目されています。

映画文化を未来へつなぐために――編集部コメント

33年前、“映画を観る場所”の概念を刷新したイオンシネマ海老名。閉館の事実は寂しさを呼びますが、そのイノベーション精神は全国のシネコンに脈々と受け継がれています。オンライン配信全盛の今こそ、劇場ならではの「共有体験」の価値を問い直す好機。編集部では以下3点を提言します。

  • 地域コミュニティ主導の上映会を定期開催し、映画を介した世代間交流を促進
  • 空間デザインと先端テクノロジーを掛け合わせた“体験特化型”ミニシアターの誘致
  • 市内小中学校への映画教育プログラム提供で未来の観客を育成

スクリーン7で響いた重低音、ロビーを満たしたポップコーンの香り、そして拍手と笑顔。イオンシネマ海老名が残した記憶は決して色褪せません。私たちもまた、映画を愛する一人として“May the Movie be with you!”の精神を受け継ぎ、次の物語を紡いでいきましょう。